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全体の約80%が水分である日本酒の醸造において、水質が大変重要である事は言うまでもありません。酒造用水は製造しようとする総米重量 の総量の20〜30倍必要といわれており、使用する目的によって下図の通り醸造用水と瓶詰め用水の二つに大きく分けることが出来ます。
※雑用用水=洗浄用水、ボイラー用水など
【醸造用水の役割】
1.洗米、浸漬用水
残留した白米表層の糠、その他の汚れを洗い去ることと、白米を水中に浸し、米粒内部に水を十分に浸透(吸水)させるために用いますが、白米は水中に溶けている有害成分をも吸着してしまうので、鉄分など酒造りにとって有害な成分を含まない水を用いる事が絶対条件です。白米1t当たり、約5〜10klの水が必要となります。
2.仕込用水
酒そのものになる酒造原料米。仕込配合に従って、蒸米、麹と共に使用されます。白米1t当たりの必要量 は1.3kl程度が一般的で、酒母、初添え、仲添え、留添え、四段用の5区分に分けて使用されます。
発酵によって生成された多くの微量成分も含めると数百にもなる成分を含有しうる、日本酒のベースとなる最も重要な水です。
3.雑用用水
醸造に関して使用するタンクなどの容器や仕込器具、室内などの洗浄用とボイラー用水などがありますが、仕込に使用する容器などの洗浄には、鉄分の少ない水、ボイラー用水には軟水が適するとされています。
【ビン詰用水の役割】
1.洗ビン用水
ビン詰工程で最初に必要なのは 、ビンを洗うための洗ビン用水で、予洗水、洗剤溶液、洗浄水などに区分されます。洗ビン用水の必要量 は、1.8リットルビン1000本当たり約6klとされており、主としてアルカリ性洗剤を用いるため、強アルカリ性の排水が生じます。そこで、それを防ぐ為に排水は酸性液で中和した後、流されます。
洗ビンの最後に用いる洗浄用水には、製品に直接接触するため、仕込水同様に鉄の様な有害成分を含まず、無菌、良質の水が要求されます。
2.割水用水
一般の日本酒はビン詰の際、原酒に加水してアルコール濃度などを市販の規格に合わせますが、この時に使用する水を割水用水といいます。原酒に対して10〜20%程度の量 を直接添加する事になりますので、仕込水と同レベルであることが基準となります。必要に応じて濾過、除菌操作を行って使用します。
3.雑用用水
ビン詰場で使用する容器、器具、機械設備の洗浄用水、ボイラー用水として使用、水質は醸造用の雑用水と同等です。
【酒造用水として有害な成分】
鉄有害成分として最も嫌われるのが鉄です。鉄は日本酒の色を濃く褐色化させ、香味を悪くさせる作用等を持っています。このため、酒造用水としての鉄分の許容量 は、0.02ppm以下とされています。 マンガン日本酒は日光、主に紫外線によって科学的に変化し、着色物質を生成しますが、マンガンはこの着色物質の生成反応を促進します。例えばビン詰された日本酒を直射日光にさらすと、わずか1〜3時間で著しい着色進行が見られます。
マンガンも鉄同様、許容量は、0.02ppm以下とされています。 重金属類主として蒸し米に吸着されて粕に移行しますが、一部は製品酒中に移行するため、許容量 は水道水の水準以下ででなければなりません。 アンモニア、亜硝酸アンモニアと亜硝酸自体は酵母の栄養物となり、酵母により消費されてなくなくってしまう成分です。しかし、これらのものは動物や植物の枯死体の窒素化合物が分解生成した成分であるため、用水中に両成分が多く溶けている場合は、水源のどこかが汚染されていることが考えられます。すなわち「不潔な水」という事になり、醸造には適さないと判断されます。 有機物有機物の存在が身と認められた場合、アンモニア、亜硝酸の場合と同様の理由であり、醸造に適しません。 細菌、野生酵母日本酒醸造にとって有害な微生物に汚染されている場合も、醸造用には適しません。
【酒造用水として有効な成分】 カリウム、リン酸、マグネシウムなどは、麹菌と酵母の増殖を助ける重要な成分で、これが不足すると製麹における麹菌、酒母における酵母の増殖が送れ、正常な製造管理をする事が出来なくなります。しかし、これらの成分は醸造用水に不足していても米の成分として蒸米中に十分含まれており、蒸米から溶出した分量 で十分であると言われています。
カリウムについて
洗米と浸漬工程の際、米から流出しやすい成分なので、流水下で米を浸漬(これを掛流しという)した場合、順調に麹菌を育成させることが出来なくなり、正常な製造管理が出来なくなる場合があります。
リン酸について
米の中では単独で存在しているものよりも、脂質やタンパク質などと結合している場合の方が多く、一度酵素によって分解されてからでないと酵母が利用出来ません。
ワンポイント
宮水はカリウム、リン酸を多く含むことが知られており、醸造用水として、最適な成分を備えています。
【軟水・硬水について】 軟水とは、カルシウム、マグネシウム、塩類の含量の少ない水で、出来る酒質は軽くきれいな酒となり、硬水とはカルシウム、マグネシウムなどを多量 に含む硬度の高い水の事をいいます。但し酒造用水においては国税庁所定分析法に基づき、一般 とは異なる基準を下表の通り、定めています。
※100mlの水にカルシウム、マグネシウムが酸化カルシウムとして1mg含まれている時に硬度1度となります。現在ではカルシウムイオンの量 により、ppmで表現されます。
【水源について】
井戸水酒造用水で最も多く利用されています。年間を通 じて水温の変化が少なく、平均気温よりも1〜2℃高いのが普通です。水質は種々の地層を透過するため、無機成分を多く含んでいます。 河川、湖沼、池河川は急流が多いという日本の地形により、無機成分をあまり含まない軟水が普通 で、古くから酒造用水としても使用されていました。しかし、最近では環境悪化が進み、酒造用水としては使用不可能となってしまったところが多くなっています。 水道水鉄やマンガンの様に人体に全く影響のない成分については、酒造用水の許容範囲を遙かにオーバーしている基準もあるため、醸造用に使用する場合、成分を浄化調整しなければなりません。また、水道水には殺菌を目的とした塩素による消毒殺菌がなされているため、塩素が溶存していますが、その量 は1ppm以下程度であり、加熱により消失しますので酒造用水としては問題ありません。しかし、ビン詰出荷の際の割水用水として用いる場合は、その臭気が移行しますので活性炭濾過を行い、塩素を除いて使用します。
【名水百選について】
「都道府県別の特徴」参照。